なぜAIで創作するのか。
理由はけっこうはっきりしている。
金がほしいからである。
まずこれがある。
いや、別に切実ではない。
明日の米がないとかではない。
今すぐ当てないと人生が終わるとかでもない。
ただ、金はあったほうがいい。
ないより、あったほうがいい。
これはもう、かなり揺るがない。
しかも私は、汗と根性で一から成り上がるタイプの成功譚を、眩しいなとは思うけど、自分でやりたいかと言われると、ちょっとしんどい。
できればこう、なんかいい感じに時代の波とかに乗って、
「えっ、これ入るんですか?」
みたいな感じで、お金が入ってきてほしい。
棚ぼたである。
私はこの棚ぼたを、かなり信じている。
信じているというか、期待している。
期待しているというか、けっこう待っている。
待ちの姿勢としてはだいぶ積極的である。
もちろん、楽しいのもある。
AIで曲を作るのは普通に面白い。
思いついた変なネタが、ちゃんと曲っぽい形になると、ちょっと感動もある。
でも、それだけではない。
せっかく作るなら当たってほしい。
せっかく出すなら、ちょっとでも金になってほしい。
さらに言えば、
「なんかこの人、いい曲作ってるな」
とも思われたい。
ここが大事である。
金だけならまだ話は簡単だった。
AIなんだから数を作ればいい。
どんどん出せばいい。
当たるまで投げればいい。
理屈としてはそうである。
たいへん正しい。
正しいのだが、私はそれをやる時に、ちょっと顔が曇る。
なぜなら、私は褒められたいからである。
ただ曲があればいいわけではない。
自分で聴いて、
「うん、これはちょっとええな」
と思えるやつを出したい。
そのうえで、誰かに
「なんかいい曲作ってるな」
と思われたい。
つまり私は、金だけでは動かない。
しかし金はほしい。
評価だけでも満足しない。
しかし褒められたい。
なんというか、要求が多い。
注文が細かい。
バイキングで皿だけはやたら大きいタイプである。
AIで創作する理由は、もうひとつある。
今がAIブームっぽいからである。
これはかなりある。
こういうのは、後から
「流行ってるらしいですね」
と入るより、なんとなく前からいた感じを出しておいたほうが得な気がする。
得というか、たぶんちょっといい。
ちょっといい気がする。
少なくとも、何もないよりはある。
今のうちに活動しておけば、将来、
「あ、この人あの頃からやってた人なんですね」
みたいな枠に、ちょっと爪先ぐらいは入れられるかもしれない。
100人なのか、300人なのか、1000人なのかは知らない。
そこはよくわからない。
だが、なんか初期勢っぽい席があるなら、座っておきたい。
別に悪いことではない。
席が空いてそうなら座る。
ブームが来てるなら先に立つ。
後で「あの頃からいました」みたいな顔ができるなら、しておく。
きわめて自然な発想である。
昔から何かをやっていた人って、ちょっとすごく見える。
すごくというか、なんか雰囲気がある。
その雰囲気だけでも、先に確保しておきたい。
中身はあとから追いつけばいい。
追いつくかどうかは、その時考える。
とにかく、今この時代にうろうろしておくことに意味がある気がしている。
ある気がしているので、いる。
このへんの判断はだいぶ雑だが、雑な打算ほど生命力がある。
そしてAIは、そういう人間に向いている。
曲を作りたい。
でも全部ひとりでやるのは重い。
良いものはほしい。
でも、そこに至るまでの坂道はできれば短いほうがいい。
できればエスカレーターがいい。
なんなら座席付きがいい。
そこへ来てAIである。
歌詞を考える。
曲になる。
変なネタを投げる。
思ったより形になる。
「これ、ワンチャンあるのでは?」
という気持ちだけは、すぐ生まれる。
この“ワンチャンあるかも”を高速で量産できるのが大きい。
私はこの「ワンチャン」が好きである。
かなり好きである。
確信まではいらない。
ワンチャンでいい。
ワンチャンがあるなら、一回やってみたい。
そうして曲を作る。
ただし、何でも出すわけではない。
そこは妙に面倒くさい。
自分で気に入った曲を出したい。
ちゃんと自分でも
「これ、ちょっといいな」
と思えるやつを出したい。
なぜなら、金もほしいが、
「いい曲作ってる」
もほしいからである。
両方ほしい。
しかも、わりと自然な顔で両方ほしいと思っている。
この欲の深さに、特に恥じらいはない。
恥じらいはないが、文にするとちょっと情けない。
だがそれもまた味である。
だから私はAIで創作する。
創作の未来がどうとか、芸術の地平がどうとか、そういう話ではない。
もっと簡単で、もっと俗っぽくて、もっとだらしない。
金がほしい。
褒められたい。
今がAIブームだから、初期からいた感じも確保したい。
でも、出すなら自分で気に入った曲がいい。
この条件で動いている。
なかなか忙しい。
欲が多いので、脳内会議も多い。
だが、こういうしょうもない欲のほうが、案外しぶとい。
世界を変えたいわけではない。
革命を起こしたいわけでもない。
できれば、ちょっと当たって、ちょっと褒められて、ちょっと先行者っぽい顔をして、ちょっとお金も入ってきてほしい。
そのくらいである。
そのくらいだが、私はこの「そのくらい」をかなり本気で考えている。
なので今日も曲を作る。
名曲を生むためというより、
「これ、なんかいい感じに転ばんかな」
という、だいぶ不純だが妙に人間味のある期待を胸に、作る。
そしてたまに、
「これはちょっとええやん」
となる。
その瞬間、私は思う。
これで褒められて、ついでにちょっとお金も入って、さらに後から
「この人、AIの初期からやってたんですよ」
みたいになったら、かなり都合がいいな、と。
かなり都合がいい。
都合がよすぎる。
しかし、その都合のよさを諦めない心こそが、創作の原動力なのかもしれない。
いや、知らんけど。
でも、ワンチャンある。
私はそういう話をしている。


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