労働が罰になった現代で、なお働いてしまう罪深き者たちへ
最近、わたしの中でひとつの危険思想が浮上している。
それが、
不労キャンセル界隈
である。
不労キャンセル界隈とは何か。
簡単に言えば、
労働が罰になった現代社会において、不労を良しとせず、わざわざ労働へ参加してしまう罪深い界隈のことである。
本来、人類はもっと寝ていてよかった。
朝は起きなくてよかった。
満員電車に乗らなくてよかった。
上司の「ちょっといい?」に怯えなくてよかった。
Excelのセル結合で精神を破壊されなくてよかった。
それなのに彼らは言う。
「働かないとダメだよ」
「社会人なんだから」
「みんな頑張ってるんだから」
「汗水流してこそ尊い」
怖い。
思想が強い。
もはやこれは労働ではない。
労働賛歌である。
そして、労働に参加し、労働を賛歌し、結果として疲労・不機嫌・通勤ラッシュ・謎会議・休日出勤という惨禍を撒き散らす。
つまり、
労働参加して、労働賛歌して、労働惨禍を生む。
参加、賛歌、惨禍。
美しい三段活用である。
内容は地獄だが。
働いている人間ほど、働かない人間に厳しい
不思議なことに、働いている人間ほど働かない人間に厳しい。
いや、わかる。
気持ちはわかる。
自分が燃えているとき、横で涼しい顔をしている人間を見ると腹が立つ。
自分が唐揚げになっている横で、誰かが冷やし中華を食べていたら怒りたくなる。
だが、そこでこう考えられないだろうか。
「自分も冷やし中華を食べればよいのでは?」
なぜか彼らはそう考えない。
むしろ、冷やし中華を食べている人間を炎上させようとする。
「お前も揚がれ」
「みんな油に入ってるんだぞ」
「衣をつけろ」
「社会人としてカラッとしろ」
怖い。
労働油の温度が高すぎる。
不労は悪ではない。むしろ人類の夢だった
そもそも人類は何のために文明を発展させてきたのか。
楽をするためである。
洗濯板を洗濯機にした。
かまどを炊飯器にした。
歩くのが大変だから電車を作った。
電車が大変だからリモートワークを望んだ。
リモートワークでも大変だから昼寝を望んだ。
人類史とは、だいたい
「もうちょっと楽できませんか?」の歴史である。
それなのに、いざ楽をしようとすると怒られる。
「苦労しろ」
「努力しろ」
「若いうちは買ってでも苦労しろ」
いや、買ってまでいらない。
無料でも迷う。
着払いなら受け取り拒否である。
労働を美化しすぎると、疲労が人格になる
働くこと自体が悪いわけではない。
誰かの役に立つ仕事。
好きでやっている仕事。
生活のために必要な仕事。
それはもちろん大切だ。
問題は、労働そのものを神棚に上げてしまうことである。
「忙しい俺、偉い」
「寝てない私、すごい」
「休んでない部長、尊い」
このあたりから危険である。
疲労が実績になり、睡眠不足が勲章になり、休日出勤が武勇伝になる。
その結果、どうなるか。
普通に機嫌が悪い人間が増える。
朝から目が死んでいる。
昼には魂が抜けている。
夕方には全員が無言。
夜には缶ビールだけが味方。
これが労働惨禍である。
不労キャンセル界隈の恐ろしいところ
不労キャンセル界隈の恐ろしさは、彼らが善意で言ってくるところにある。
「ちゃんと働いたほうがいいよ」
「何もしないのはよくないよ」
「社会に参加しようよ」
言葉だけ見ると立派である。
だが、その先に待っているのは何か。
早起き。
満員電車。
謎の朝礼。
目的不明の会議。
誰も読まない議事録。
返信だけで終わる一日。
そして夜、コンビニの明かりだけがやさしい帰り道。
これは本当に社会参加なのか。
それとも巨大な罰ゲームなのか。
そろそろ「働かない勇気」も評価されるべき
もちろん、完全な不労は難しい。
生活がある。
家賃がある。
税金がある。
なぜか毎月請求が来る。
人類は自由を求めているのに、クレジットカードの引き落とし日はいつも正確である。
だから現実には働くしかない場面も多い。
しかし、せめてこう言いたい。
働きすぎを誇るな。
休まないことを美徳にするな。
不労をキャンセルするな。
人間は働くために生まれたのではない。
うまい飯を食べるために生まれた。
布団で寝るために生まれた。
好きな音楽を聴くために生まれた。
休日の昼から酒を飲んで「まぁええか」と言うために生まれた。
たぶん。
少なくとも、朝からExcelの罫線を直すためだけに生まれたわけではない。
結論:労働参加より、乾杯参加へ
不労キャンセル界隈は言う。
「働け」
「頑張れ」
「社会に貢献しろ」
わたしは言いたい。
まず寝よう。
そして起きたら考えよう。
本当にその労働は必要なのか。
本当にその会議は必要なのか。
本当にその資料のフォントサイズを直すために、人類は火を使い、文字を発明し、インターネットを作ったのか。
たぶん違う。
だから、労働を完全否定するのではなく、こう唱えたい。
労働はほどほどに。
不労は尊重。
怠惰は文化。
休息は人権。
そして、不労をキャンセルしようとする罪深き界隈に対して、静かにグラスを掲げよう。
労働参加ではなく、乾杯参加。
労働賛歌ではなく、怠惰賛歌。
労働惨禍ではなく、休日万歳。
本日も、働きすぎた皆さま。
そして、働かずに済んだ選ばれし皆さま。
お疲れさまでした。
不労をキャンセルするな。
布団を守れ。
酒を冷やせ。
まぁええか、乾杯。


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